ブエノスアイレス・ニュース No.64

2017年を振り返って!

 2017年12月20日

 年末になり、混沌としているブエノスアイレスです。その理由は、年金支給減額の法案を国会(コングレッソ)が審議しているためです。国民が積み立てた年金の支給額を今になって減額するという行為は、それ自体、投資詐欺に似たもので許しがたい行為です。お年寄りが国会の前で、抗議する姿は、見るに忍びないものがあります。しかし、この騒ぎが、暴動にまで発展した背景には、度重なる公共料金の値上げ、各種補助金の廃止等により市民の不満が頂点に達したということだと思います。

さて今年最後のブエノスアイレス・ニュースということで、今回は私事を含め2017年を振り返ってみたいと思います。

まず、政治・経済面では、昨年に引き続き、電気、ガス、水道の料金が上がり、それに伴い交通機関の料金、そして食料、衣料等の価格が連鎖的に上昇。大統領府(カーサ・ロサーダ)、国会議事堂(コングレッソ)、市議会会場の前では、年初より連日デモが行われていました。また、教職員組合によるストライキが多かったことを記憶しています。私が通うCETBA(通称タンゴ大学)でもストによる休講が多発しました。

昨年の安倍総理のアルゼンチン公式訪問を受けて、今年5月には、マクリ大統領が、訪日を果たしました。ワーキングホリデー等の新しい制度が両国間に導入されました。今後日本とアルゼンチンの交流が一層親密になることを願っています。

年末12月(ついこの間ですが)WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)の国際会議がここブエノスで開催され世界164ヶ国の代表が集まり会議を開きました。この間(3日間ですが)プエルト・マデーロ(ブエノスアイレスの港)地区では、厳戒体制の警備(会場入場者は、全て指紋認証によるチェック)により凄まじい交通渋滞を引き起こしていました。日本からも140名の代表者が来亜し、会議に臨んでいらっしゃいました。来年は、G20(20ヶ国・地域首脳会議および20ヶ国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議)がブエノスアイレスで開催予定で、また、混乱が予想されます。

次に文化面での出来事ですが、私が関わるアルゼンチンタンゴについては、ミロンガの経営難が大きな問題となった年です。今年、公共料金の値上げに伴う営業利益の圧迫によりミロンガを閉めたオーガナイザーがたくさんいます。4月にオープン記念で踊らせていただいたミロンガ(Oro y Plata Milonga)は、なんと開業後3ヶ月で家賃の高騰にあえなく閉店となりました。他にも数多くのミロンガが姿を消しています。”El Tango no se clausura(タンゴは終わらない)”という名前でボランティア活動が起こる程で、深刻な問題となっています。

私事ですが、今年は年初よりコンペに積極的に参加しました。サラテ・タンゴフェスティバル、エル・オエステ(モロン)の大会、ボエド・タンゴフェスティバル、メトロポリターノ(ブエノスアイレス市の大会)、そしてCIM(Campeonato Inter-Milonga)。残念ながら世界大会には出られませんでしたが、各大会を通じて出場者のタンゴのレベルが上がっていることを実感できました。また、その刺激を受けて自分の中のタンゴも変化した気がします。

そして、1年間通ったCETBAにも大きな変化を訪れています。今までは、Centro Educativo del Tango de Buenos Aires(要するにブエノスアイレス市が運営する教育センターのタンゴ部門)という位置づけでしたが、市内にある130の教育センターをブエノスアイレス市が、2017年年末をもって全て閉めるということになり、CETBAは、市の教育センターとしての役割を終えることになりました。来年は、Centro del Tango de Buenos Airesということで、その名称も少し変わります。あと一年なのでなんとか卒業まで保って欲しいものです。

冒頭に書いた理由により、連日市民が国会の前で暴動を起こしているという危機的状況、そして今回お話してきた非観的内容の原因は、すべて国家の経済政策に関わる要因であることは間違いありません。しかし、就任後3年になるマクリ大統領とその政権にすべての非があるわけではなく、国家財政状況を無視して補助金等をばら撒き続けた前政権にも大きな責任があると私は思います。「改革には痛みが伴います。」と言った日本の総理大臣(誰だったか忘れましたが)の言葉を思い出しました。

来年もブエノスアイレスは、激動の年を迎えそうですが、もう少し市民の暮らしが向上し、危険の少ない街になることを願っています。

 

1年間お付き合い頂きました読者のみなさま、ありがとうございました。クリスマスそして、よい年をお迎えください。また、来年もお付き合いの程、よろしくお願いします。

 

ブエノスより