[No.56] フェスティバルと世界大会!

ブエノスアイレス ニュース

アルゼンチンタンゴ フェスティバルと世界大会!

前号のお約束通り、今回はブエノスアイレス市主催のタンゴフェスティバルとタンゴダンス世界大会についてご報告します。

 

タンゴフェスティバル

今年のフェスティバルのテーマはいくつかあり、一つはアストル・ピアソラの没後25年やこちらもピアソラの作曲した「ロコのバラード」という曲の歌い手として有名なラウール・ラビエの80歳記念などです。

記念コンサートが、メイン会場であるボカ地区のウシーナ・デ・アルテで行われました。

シーナ・デ・アルテの入り口

 

今年は、フェスティバル会場が、ブエノス市内34箇所に分散しており、世界大会の観戦がてら何かを見る、聞くということができない状況です。
メイン会場にも展示物はほとんど無く、世界大会とコンサートが行われているだけという感じでした。
ということで残念ながらフェスティバルの様子はこの辺でお終いにしたいと思います。

 

タンゴダンス世界大会

さて、世界大会の状況ですが、既にインターネットで報じられている通り、ピスタ部門では日本人は、準決勝に進むことが出来ませんでした。
とても残念なことです。

しかし、予選での彼らの踊りは、とても素晴らしいものでした。
私はあまり長い時間観戦できませんでしたが、それでも日本人4組の踊りを見ることができました。
みんなとてもしっかりしたアブラッソで、パートナーを思いやりながら、綺麗に踊っていました。個人的には、とても好きな踊りでした。
でも、あえて敗因を見つけるならば、それは2点あると思いました。

審査基準の変更

1点目は、審査基準の変更です。

数年前に部門名称が、サロンからピスタに変更になりました。
これは、単に名称が変更されただけでは無く、レギュレーションも変わったのです。
それまで、禁止されていたガンチョ等が解禁になりました。

これにより表現の幅は広がり、ある意味ショータンゴの踊りとピスタ部門の踊りの距離が近くなったと言えます。
この影響により、今まで情熱を内に秘めた踊りが評価されてきたのに対し、外に表現する踊りへと変わっていきました。
私を含め、日本人は外への表現はあまり得意とは言えないと思います。

 

音楽の表現の仕方

2点目は、音楽の表現の仕方にあると思います。

単純な4拍子の表現では、なくなってきているということです。
これは、タンゴの音楽の進化に伴うことでもあります。例えば、「リズムの王様」と表される、ファン・ダリエンソの曲にしても、マルカートを効かせた4拍子のリズムだけで出来ている曲は1930年代のみで、それ以降の曲には、様々なリズムが取り入れられています。
それを表現する踊りとしては、すでに4拍子を2歩で歩く単純な歩きだけでは、表現していると見なされなくなってきていると言うことです。
(個人的には、この歩きがとてもタンゴらしいと思うのですが・・・)

シンコペーションやトラスピエをうまく表現しないと高得点をもらえないようになっていることは、事実だと思います。
このような変革によってタンゴ(踊り)は、どのような方向に進んでいくのでしょうか?
私はこの点に一抹の不安を抱かざるを得ません。
タンゴ特有と思っていた内に秘めた情熱がなくなり、サルサやクンビアなどの他の踊りと同じように単なる外に向けた表現になるのではないかと。
(サルサ、クンビアの関係者の方々、このような引き合いにだしてごめんなさい。)

世界大会で頑張る日本人ペアー達

 

ただ明らかに言えることは、テクニック的には目をみはる程の進化を遂げていることです。このテクニックと表現するものが、融合する日が再び訪れることを切に希望しています。

 

 

2017年8月21日 ブエノスより